仕事人(プロフェッショナル)の現場

私達は誰でも、大人になれば「仕事」をして生計を立てていきます。ここでは、将来の仕事探しをしているキミに様々な「仕事人(プロフェッショナル)の現場」をご紹介していきます。

<プロフィール>
西岡百合香 平成5年(1993)大阪生まれ。ドルフィントレーナーに憧れ、大阪動植物海洋専門学校へ入学。卒業後、第一志望であった「太地町立くじらの博物館」へ就職。約三年半、トレーナーとして務め、イルカ・クジラの飼育、ショーやふれあい体験の対応などを担当。平成29年秋に退職し、母校の非常勤講師としてナレーションや海洋哺乳類についての授業を担当。平成30年、常勤講師に異動し、水族館スタッフを目指す学生をサポート。

<仕事紹介1>トレーナー

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ドルフィントレーナーの仕事は「イルカのトレーニングをする」ということだけではありません。トレーニングを行うためには、「健康管理」が必要不可欠です。毎朝の給餌(餌を与えること)でイルカ一頭一頭の状態をチェックすることから1日がスタートします。

●トレーナーへの寄りはどうか(すぐに近づいてくるか)
●エサへの反応はどうか
●顔つき(しんどそうな目…など)
●体温測定

他にも、体に傷はついていないか、他の個体とは仲良くやっているかなど。
イルカを含め、全ての動物は、人に「しんどい」「お腹が痛い」などと伝えることはできません。それどころか、もとは野生動物なので弱っている自分を隠そうとします。そんなイルカたちをトレーナーは観察し、その目で様々な情報を入手し、一早く異常に気付かなくてはなりません。
そのためにはその個体の「普段の状態」を知っておく必要があります。体調に問題はないがエサを飲み込むのが普段から遅い個体や、トレーナーがくるとすぐに寄ってくる個体と遠くから見ているだけの個体など、個体によってさまざまです。

そして、トレーナーの観察眼以外に、異常発見のヒントとなるのが、体温測定や採血(血液検査)、体長・お腹周りを測る身体測定などです。体温測定は肛門からプローブを入れて、直腸の温度を測ります。これはイルカに“肛門にプローブを入れる前から測定が終わるまで(人がやめるまで)じっとしておく”ということを教えます。

採血や身体測定も同じです。注射をしたり、メジャーを体に当てて長さを測っている間、じっとしておくようにトレーニングします。この「健康管理」のためのトレーニングを「ハズバンダリートレーニング」(略して「ハズバン」)といいます。これらを毎日、あるいは定期的に行うことで、早い段階で異常に気付き、病気であれば治療を開始することが出来ます。

そしてもう1つ。「健康管理」の中で重要なのが、「餌の管理」です。 常識的なことですが、イルカたちは主に魚を食べています。水族館のほとんどは冷凍された魚やイカなどの魚介類を餌として利用しています。冷凍魚は鮮魚と比べ、コストも安く、年中安定した入荷ができるうえ、寄生虫を殺すこともできます。ですが、冷凍することでビタミンが破壊され、解凍すると水と一緒に栄養分が流出してしまいます。それを補うために餌にビタミン剤などを入れて給餌します。そして、個体ごとに与える餌料種(魚種)や給餌量を決定します。成獣や幼獣、季節、妊娠中、育児中などその個体の様々な場面で給餌量は変更します。
例えば、育児中の母獣には栄養価の高いサンマやサバを与え、子供のイルカにはシシャモなどの小さな魚を与える。など。

また、餌料種を変更する際は変更予定の魚種をその個体が食べるのかを確認する必要があります。イカばかり食べていた個体に、ある日、突然サバを与えるのではなく、イカを与えつつ、サバを数尾与えて、問題なく食べるのか確認します。個体によっては、餌の感触が違っただけで吐き出すこともあります。
様々なことに気をくばり、工夫して、「イルカを健康に飼育する」。そのうえでトレーニングし、ショーを行います。

<仕事紹介2>トレーニング

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イルカは、いつもトレーニングに参加し、人の指示を何でもきくわけではありません。
その時の周りの環境や、体調などによってもトレーニング意欲は上がったり、下がったりします。「周りの環境」というのは、プールの水が汚れていて周りが見えにくい環境でのジャンプは、助走や着水が難しいものになります。また、トレーニング中、他個体からの威圧なども良いトレーニングには繋がりません。また、環境も体調面も問題がないときの意欲低下は、トレーナー側に問題があるかもしれません。私も新人のころは、担当個体の種目レベルを把握しきれず、褒めることもなく、坦々としたトレーニングを行っていたせいで、イルカの意欲も低下し種目レベルがどんどん下がっていった。なんてこともありました。

トレーニングは、覚えさせたい種目を教えるための計画を立てて行い、動物に伝わらないときは、必要に応じてトレーニング方法を変えたりして、動物に理解させます。その中で動物との信頼関係を築き、それを繰り返し、それぞれの種目レベルを上げて、ショーに出ることができます。
また、トレーニングの目的は必ずしも「ショー」だけではなく、健康管理や動物の運動、刺激を与えるなど、「飼育管理」するうえで大切なことなのです。

<仕事紹介3>ショー

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GWや夏休みが一番来客が多いのでショーの種目では水中パフォーマンスを取り入れたショーなど普段とは異なる種目をやることもあります。
ショーでは、動物と息を合わせるのはもちろん、他のトレーナーともコンタクトを取りながら行います。ショーの前に、ある程度「どの個体がいつ何の種目をするか」を決めておくのですが、動物の意欲や環境などの影響で順番通りに種目が出せないこともあります。そんなときにトレーナー同士がコンタクトを取り合って「次、私(のイルカ)がジャンプするよ!」という具合にショーを進めていきます。

また、水中パフォーマンスではトレーナー自身の運動能力も問われます。
私は水中への飛び込み練習からスタートしました。飛び込むまでは良かったのですが、水に飛び込んだあと、動物が私の足を押すまで、浮かばずに水中で待たなくてはなりませんでした。浮力のあるウェットスーツで、何の支えもなく水中にとどまることがなかなか出来ませんでした。最初のうちは、ショーで飛び込んだものの、先に私の足が浮いてくるといった、格好悪いシーンもありました。練習を重ね、深い位置までの飛び込みと、その後、水中にとどまるコツを身に着けることが出来ました。

ショーだから、動物が高いジャンプをする。のではなく、毎日同じ時間に数十分行うショーの方が、意欲の低下がみられることがありました。ショーでは「しっかりやりなさい」と動物にさせるのではなく、“「よくできた!」と褒めるためにはどうすれば良いか”を考えながら取り組んでいました。
ショーで意欲が低く、ジャンプがとても低い時には、やり直しをして少しでも高く飛んだら、そこを褒めて自信をつけさせる。などというやり方もしていましたが、その時の動物の状態によっては、やり直し(もう一度同じサインを出す)をした時点でショーに参加しなくなることもあるので、動物の雰囲気を感じ取り、臨機応変に対応することが重要です。

<仕事紹介4>講師

三年半という短い期間ではありましたが、トレーナーを数年勤めたら講師になりたいと思っていたので、転職を決意しました。講師になるにあたって、授業づくりは大変でした。現在も必死に作成中ですが、教材を作れば作るほど、意外と理解しきれていなかったことが多かったり、授業をしながら「そもそもなんでこうなるんだ?」と思うことが出てきて、教材作りはむしろ私の勉強になっています。

しかし、学生たちに教えたい知識は山ほどあります。また、飼育員やトレーナーを目指す学生たちが夢を見失わないように支えたいと思っています。イルカのトレーナーは、毎日イルカと過ごし、息の合ったパフォーマンスを披露し、輝いて見えるかもしれません。ですが、実際は肉体労働でもあり、冬の寒い時期に冷たい水の中に入ったり、担当動物の死亡や休みの日も職場の動物たちを気にしたり、精神的な疲労におそわれることもあります。このような厳しい仕事ではありますが、イルカを「嫌いだ」と思ったことも、トレーナーが楽しくないと思ったこともありませんでした。イルカが「好き」だけではもちろん続きませんが、好きでなければ続けられる仕事ではないので、学生たちには、トレーナーになるまで、一生懸命夢に向かう勇気を持つサポートが出来るように、取り組んでいきたいと思っています。

大阪動植物海洋専門学校

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